骨折防止機能付きオシャレ下着の開発で起業
きっかけは祖母から下着の購入を依頼されたことだったと言います。高齢者用の下着はデザインは全くの度外視で色もバリエーションがなく、一切ファッション下着と呼べるものはなかったそうです。
もともとワコールでデザインを担当していた松本富子さん。30代で独立し、身体に馴染む下着を追求するうちに筋肉の仕組みや高齢者の体の変化に興味を抱いたといいます。
高齢になると体格が変化し、人目を気にしてオシャレをしなくなってしまいます。また、寝たきりを恐れて骨折を防ぐべく、外出を控える傾向になります。しかし、かえってオシャレや外出の機会がなくなると認知症のリスクは上がり、介護を受ける可能性は高くなります。
こういった日本の高齢者女性に元気に美しく歳をとってもらいたいと、松本さんの挑戦は始まりました。
隠れたニーズをいかに引き出すか
高齢者が転倒する理由を探り、高齢者に必要なサポートを学んだうえで製品開発が進みました。自信満々で出した試作品の発表会では高齢女性の受け入れが悪く、挫折感を味わったそうです。
しかし、会の終了後や後日電話での問い合わせがありました。人前では相談しにくかった、と皆口をそろえて言ったそうです。松本さんは潜在ニーズを確信し、彼女たちのプライドを傷つけない方法を考えました。
産業技術センターとの共同開発で機能性と女性らしいデザイン性を兼ね備えた製品を完成することができました。現在は販売に力を入れるために株式会社とみを設立し、独自のキャリアを確立しました。
家事と仕事の両立の極意
松本さんは3人の子どもを持つ母親です。全員既に社会人になっているそうですが、女性の起業には子育てや親の介護など、家庭との両立は必ず付いて回る問題です。どのようにして両立生活をこなしたのでしょう。
両立の極意は仕事と家庭の時間を割り切ることだったといいます。仕事も家族との触れ合いも集中することで濃度の濃い時間を作ったそうです。あとは、ひとりで背負いこまずにプロや周囲の協力を仰ぐことも大切だそうです。
2011年2月に東京の起業家向け施設に事務所を構え、売り上げアップを目指します。ファンは確実に増え、商品自体の値下げにも成功し売り上げの倍増を予測しています。機能性下着に加えて足のサポーターなど介護関連商品の開発に今後も力を入れていく予定です。
女性ならではの目の付けどころや家庭との両立は今後起業を目指す若い女性起業家の良いお手本だと感じられます。
株式会社とみ